Moonlight scenery

   “ The spring approaches.
 


寒くて何かと億劫な冬が明ければ、春の到来。
極寒の季節が明けるというだけでもホッとするのに加えて、
暖かさに誘われて、木の芽が芽吹き、花が咲き始め。
動物の仔らも次々と生まれい出…と、
さまざまな息吹が感じられ始める、
正に生命力に満ちあふれる季節の到来でもあり、

 「まあ、ウチは
  それほど豪雪地帯って訳でもないんだけれど。」

淡い若草色という、
アースカラーのいかにも春めいたスーツを小粋に着こなす、
佑筆こと書記官のナミが肩をすくめる。
確かに、平均を取るまでもなく滅多に雪は降らない土地柄で、
何年か前に途轍もなく降った年があったようだが、
その折も 戸惑うどころか、
学校では授業放り出して雪合戦になってたって話を
お伝えしたような気がしますし。(う〜ん)
地中海沿岸の温暖な地域に属すR王国なので、
寒さに備えない訳ではないけれど、
どちらかというと
寒いところから逃れてくる観光客が多いくらい。

 「でも雨の日が多いんだよなぁ。」
 「だな。」

そうですね、
夏場カラッとしている分を補えるだけの降水量が
冬場に集中してますものね。

 湿気はメカには大敵だかんな、
 薬品の保管にも大敵なんだぞ、と。

車輛部の主任であるウソップと、
医療センターの研修医を務めるチョッパーが、
暑くて蒸すのも大変だろけど、低温で高湿ってのも困りものだと、
彼らなりの不平を並べあって見せるほど。
というわけで、やっぱり夏場に比べりゃ陰鬱な冬が、
やっと明けて訪れる春は、こちらの皆様にも待望のという感が強く、
欧州のどこの国でもたいがい“春のカーニバル”が催される例に漏れず、
こちらでも“ようこそ春vv”というお祭りが予定されており。

 「国民の皆さんにも沸いてもらうけれど、
  親しくしている海外のお客人を招いての宴も用意されているし。」

そういう機会に大臣クラスや副総理など主幹筋同士が、
提携を狙ったり、国内外へのアピールを狙ったりと、
抜け目なく会談を持つのはよくある話。
表向き、対外的にはさしたる問題も摩擦も抱えてはおらず、
至ってフランクリーな国情を中立的としている割に、
だがだが、経済的な主幹が集うとか、
何かしら堅苦しい会議の場になったことはないのも不思議…

  …って、白々しいですかね?

実は、色々な情報を潤沢に束ねているがため、
資産と地位的な立場には困っていない“小さな巨人”なのであり。
外交戦略だって こそりとながら巧妙に打って出ていて、
表立っては長閑な田舎、だがだが実は…と
列強から一目置かれておいでの“地中海の奇跡”。

 「…それとこれと、どう関係あるんだよっ。」

ちょっと久々に、世界的な地位の解説をやらかしておれば、
それがどーしたと、お傍衆らを前に思い切り膨れてござるのは。
近日にも、欧州社交界へのデヴュタント、
今年一人前の身としてデビューを飾る“プリマヴェーラ”たちを迎えての
この国独自の晩餐会が早速開かれるのを前に、
下ろしたてのスーツを試着させられている、
外交大使こと、第二王子のルフィ様。
自国での開催とあって、ホスト役をと任され、
フォーマルには違いないが、やや洒落っ気を出しつつも重厚な、
蘇芳という色合いのスーツなのはまあいい。

 「何かべったりすんだけど、この頭。」

例えるなら、雨に濡れそぼってしまった、
しかもそれへ一丁前に怒っているポメラニアンの仔犬のような。(笑)
普段あれほど跳ね回ってたナチュラルな黒髪が、
今は整髪料できっちりと撫でつけられていて。
そんな処遇へぶうぶうと膨れているところがまた、
おっかないどころか微妙に可愛らしいから困ったもんで。(大笑)
どうせ七五三だよ悪ぁるかったなぁと、
柔らかそうな頬を膨らませ、ぷんぷくぷーとむくれておいでの王子様だが、

 「何 言ってんの。
  いつまでもあんな、サッカー小僧みたいな
  ぼさぼさ頭でいいワケないでしょうが。」

スプレーというのは大仰だなと思い、
フォームを使ってみたら、これが案外と強情な寝癖だったりし。
ソフトタイプのジェルやワックスで
何とかオールバックにまとめて差し上げたのだが、
そうともなると、べたべたした感触がご本人様には気に入らぬらしく。

 「それに思ってるほどベッタベタでもないのよ?
  あ、こら触らない。」

 「む〜〜〜。」

日頃ろくすっぽ構わないくせに、
構われると俄然と気になるものなのか。
いやいや、そこはやはり…頭皮へ妙な感覚が伝わるかららしく。
下唇を突き出しての、不快でございというお顔が
何とも判りやすいったらなく。
身にまとっているのが
シュッとスタイリッシュな
フォーマルデザインのスーツと来ているから、

 「〜〜〜〜。」
 「可笑しいんなら笑った方が楽だぞ、ゾロ。」

そうしなと言いつつ、しっかと眉根が跳ね上がってる正直さよ。

 「いや何か、そのままコントとか始めそうなノリに見えてな。」
 「じゃあゾロも同じの着るか?」

 いやぁ、緑の髪に赤いスーツは映えないだろよ。
 だったらゾロの方のスーツは緑でいいさ、と。

妙な方向への言い合いになりつつある二人なのを、
傍観者ポジションから見やる周囲はといや、

 「お若い層へのアピールレセプションじゃあなかったっけ。」
 「アピールはアピールでも、
  どんな芸風かってアピールになりそだな。」

確かに妙な印象しか沸かない髪形なので、
あれでは笑いを招くだけぞと、
シャンクス陛下からもやんわりした苦言が送られ。
第二王子の大人っぽい髪形初披露、
結局この春は見送られたそうでございます……。






     〜Fine〜  14.03.23.


  *何のこっちゃなお話ですいません。
   男性の整髪料にも色々あるんだなぁと思いましてね。
   昔はヘアトニックとポマードくらいしかなかったはずが、
   今や、ムースにジェルにワックスにグロスと、
   女性のと変わらない品数らしいですね。
   ああでも、ビジュアルバンドの方々は
   1ステージに1本使い切る勢いで、
   スプレーで立たせてたんでしたっけ?
   今時というより、もーりんが知らなんだだけでしょかねぇ。


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